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シニアビジネスは男がつくる | ||
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第2章 シニアビジネスを成功に導く12のポイント
「輸送ビジネス」に明日がある
また、アメリカで学んだことがあります。高齢者ビジネス成功のカギは、輸送システムのインフラをどう整えるのか(年を取ると輸送が大事)ということでした。シニアの場合、体の機能低下で足となるものをどう確保するのかが重要になります。一番の問題は輸送なのです。つまり、トランスポーテション(Transportation)が重要なんですね。 出かけてみて気づいたのですが、アメリカでは高齢者のコミュニティーには必ず足回りの手配をするセンターがあります。住民の依頼があれば、タクシーを頼んでいました。シニア向けのビジネスを考えるときのキーワードは、買い物に行く、病院に行くなども含めてすべてに、「足まわりの確保」がキーワードとなってきます。 一〇年ぐらい前にタクシーの運転手さんから、次のような興味深い話を聞きました。 昼間、仕事が忙しくなる日が決まっているそうなのですが、二カ月に一度、年寄りが年金を受給する日がそれにあたるのだそうです。シニアになると体は一カ所だけが悪いということはないんですね。頭からそれこそ足の先まで悪いところだらけ。病院も一カ所で終わらない。内科で診療が終わったら次が皮膚科というように病院まわりをします。そのためにタクシーを待たせるのだそうです。こんな日は昼間、走るだけで目標売り上げを確保できると言います。輸送について考えるだけでもビジネスになると思います 最近、日本でも介護タクシーが出はじめました。NPOでも介護タクシーの事業ができるようになりました。実際にタクシー会社とNPOが競合して、採算が大変だという話も聞いています。たとえば旭タクシー株式会社(http://www.asataku.co.jp/)は、もうすでにタクシーでのデイケアを始めています。事業として立ち上げから従業員の手配をしたり、毎日のオペレーションをするのが本当に大変だといいます。そう考えると、シニアビジネスは単純な収益のみの追及では、うまく行かないんですね。 また、コミュニティービジネスは、住宅を作るときも、住宅という器だけを作るのではダメなのです。住宅の中にリース会社、旅行会社、タクシー会社、レストランも入るというふうにする必要がある。 そうすると、住宅ビジネスのこれからのキーワードは、「コンシェルジェ機能」が欠かせなくなってくるわけです。 最近、ボチボチですが、このようなことを実際にサービスとして行っているデベロッパーが出てきました。特にシニアコミュニティーを作っているところは、必ず窓口にコンシェルジェを置いています。 たとえば、ゴールド倶楽部の会員である大阪に株式会社創建(http://www.k-skn.com/)という会社があります。銀行のグランド跡地約四ヘクタールを落札し、有効利用しました。 マンションや一戸建て、有料老人ホームの三タイプを複合させた大規模な街づくりを開発しました。街の入り口にはコンシェルジュを設置し、セキュリティ面では街全体に二四時間監視システムを導入したのに加え、インターネットを利用したセキュリティシステムもあります。こうして三世代共生のふれあいタウンを実現したのです。 私はコミュニティーを考えた場合、ビジネスアプローチにふたつの入り口があると思っています。 ひとつは病院系で病院をへそにして、コミュニティーを作っていく。 もうひとつは、福祉系、一般企業からのアプローチ。これは病院を買収していく展開になるのではないか。 そう考えています。 日本のシニアビジネスは、日々随分と進歩しています。私のお客さんでも病院経営をしているところは完全にコミュニティー化しています。地域サービスセンターも病院内にもち、待合室も地域に開放して、診療のない時間には、ダンスパーティーをやっているのもその活動のひとつ。 地方の病院が、そういうコミュニティーセンターになっていて、町内会の会合に会議室を使わせたりもしています(医療法人秀公会http://www.azumanh.or.jp/)。画期的なことでしょう? 最初からこの病院が、ここまでできたわけではありません。急性期の病院、老健は作っていましたが、利用者の声を聞いた中で訪問介護のステーションを作ったわけです。そうこうするうちに地域社会の中で、コミュニティーができあがってきたのです。 ですから、病院が横に広げていく。病院の先生でそこまで考える人は少ないと思いますが、これが病院からのアプローチです。 逆に福祉をやっていきながら、病院を買収していって、コミュニティーを作っていく。いずれにしても、シニアコミュニティーは、医療が大きなポイントになります。何かあったときには、すぐに駆け込む病院がコアになるのは当然です。衣食住全部が入ります。ですから、シニアビジネスは経済そのものなのです。